(有)二階堂商店

しもたや。

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ながいくび(仮)①

嫁子が書いた駄文。横書きに不慣れなため、非常に読みにくいです。
何度か手を入れてみましたが、どうも文章自体に問題があるようであまり良くはなりませんでした。
読みにくい上につまらないものを見る覚悟のある方のみどうぞ。


 街灯がおとす薄ら寒い明かりの向こうに広がる闇、その広がりの奥に小さな白い点がひしめいている。
視界の下方に集中するそのドットの群れ方へと進む靴の下では小石と地面が擦れて磨耗していく。
彼の歩く細い路地は、いまどき珍しくなった砂利道。その突き当りにあるのは友人が「文化財」と揶揄する木造建築。ただ家賃が安いという意外に利点のない彼の住処だ。
ポケットに手をやり、当たり前に鍵が存在することに安堵する。どうあがいても無くすことなどありえないというのに。
一歩踏み出せばその歩幅だけ暗い道の奥の白い点の群れが近づいてくる。行く手を阻むほどに伸びた雪柳の枝を押し分けて、白い花の中を進む。ぱらぱらと花粉の散る気配が闇に広がってゆく。
靴底の感覚が平滑になれば、それがようやく扉の前にたどり着いたことの証明になる。
手の中に握った鍵を差し込みながらぬるい風に流れる前髪を目で追い、その眼球の端で無感動に雪柳をにらんだ。
押しのけられた枝はゆらゆらと従順に揺れているが、抱えた無数の白い花を散らそうとはしない。
骨董品のような引き戸をぞんざいに撥ね、彼はその身を一段深い闇へと滑らせた。

“ながいくび” a long bottleneck

 じりじりと足の裏を擦りながら進むのは部屋にいるはずの彼女を踏んでしまわないためだった。
目を閉じているのと大差ない漆黒の中で、靴下に古びた畳のささくれが引っかかっては外れることを繰り返している。
オートランプのない家などもはやここ以外にないのではないだろうか。部屋の中央で電灯から伸びた下げ紐を捜して手を上げる。右肩にかけた鞄が重く食い込んだ。
見えもしないのに目を凝らしていたのはいつまでだったか。今は目を閉じて、指先で澱んだ部屋の空気をかき混ぜ、感覚のない闇の中を捜している。
普段ならすぐに触れられるはずのプラスチック球が、今日に限ってなかなか見つからない。小さく悪態を吐き、それでもひたすらに左腕を動かしているうちに手の甲が何かをはじく。天井からぶら下がる闇の中に気配が消えないうちにそれをつかもうと、彼はとっさに右手を闇に差し込んでいた。空をつかんだ勢いで、鞄が肩から滑り落ちる。
ぱちん。
落下物が床に激突する音のなか、かき消されることのない別の音を彼は確かに聞いた。
何かのはぜるような。何かの壊れるような。
その「何か」がなんなのかが瞬間的に察知されて、すべての感覚が白濁する。
「ヤシュ……っ!」
思わず漏れた声は、ほとんど吐息のようにかすれていた。
不快な寒さが揺れながら背中を這い登る。脳髄を抜けて脳に脂汗をかかせてくるような不快感。
鞄を跳ね除けたのが先だったか、それとも電気がついたのが先だったかは覚えていないが、ともかく蛍光灯に照らされた部屋の中央で彼が目にしたのは床の上で折れて転がる十本いくらの安いボールペンのクリップ部分だった。
「……はー…………ビビったぁ。」
尻をつけずにへたり込み、自分の膝に額をめり込ませた。折りたたまれた体から空気が押し出され、肺が安堵にしぼんでゆく。
「おかえりなさいキリカ、おつかれですか?」
少女のものを模した音声が降ってくるほうを見上げれば、彼女は電灯の下げ紐に腕を絡ませて揺れていた。
彼の手のひらに収まるほどの小さな機械仕掛けの少女人形。「神姫」とかいう名称があるらしいが、そんな名前は彼にとってはどうでもいいことだった。
「『おつかれですか』て……お前なぁ。」
立ち上がり、彼女を電灯からおろしてやりながらまた息を吐き、吐いた分だけ部屋のぬるい空気を吸い込む。肺の中で安堵を育てるように。
手の中の少女は首をかしげ、じっと彼を見上げて言葉の続きを待っていた。くすんだ薄い緑の長髪が左手の親指の付け根に触れている。
「鞄の下敷きにしてしもたかと思て、かなり焦ってんぞ。」
言ってから、この訛りを彼女が認識できないことを思い出す。とっさの時にお国言葉が出てしまうのはどこの人間でも同じなのだろうか。今度は鼻からゆっくりと息を吐き、少し考えてから言葉を紡いだ。
「お前が壊れたかと思って心配した。」
彼女の中のハードがたてる微かな音が振動として手のひらに伝わってくる。ゆっくりとあごを引き、彼女は「微笑み」の角度で静止した。
「ありがとうございますキリカ、とっても……うれしいです。」
小指の爪ほどもない手のひらを胸に当て幸福そうな声で呟く姿に目を細めながら、それでも喉の奥に異物感があるのはなぜだろう。
どうしても掻き出せないそのわだかまりを、彼は「キリカ」という響きのせいにした。
嫁子の | コメント:4 | トラックバック:0 |
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コメント

確かに、ライトノベルとは趣を異とする書き方ですが……。
私は好きです、こういうの。
むしろ、ここまでやれるのはすごいと思うの!
正直に羨ましかったりします。

内容も、個人的に興味をそそるもので。
神姫の描き方や神姫とのやり取りなど、他の神姫SSでは見ない表現に、わくてかしてます。
無理はしないように。
でも、続きは楽しみにしております(・ω・ゞ
がんばっ!
2009-07-02 Thu 21:23 | URL | 東雲 [ 編集 ]
おお、一体どんな作品になるのか気になっておりましたがこれまたレベルの高い…!
立体物以外にもこういった才能をお持ちとはホント多才ですね!
訛りが通じなかったり等どことなく“機械”っぽさを連想させる表現など他の方のストーリーではあまり見ないような表現も独特で興味を惹かれます!
いろいろ大変でしょうしすぐにという訳にはいかないでしょうけど続きを楽しみにしてますw
2009-07-02 Thu 23:12 | URL | arahabaki [ 編集 ]
いろいろと、妄想を掻き立てられますねぇ……
本来なら神姫に関わりのなさそうな主人公
なにやら微妙に訳ありっぽい「キリカ」さん
次が楽しみです。
さあ、次の話を!ハリー!ハリー!
嘘です。のんびり楽しんでやってくださいませ。
2009-07-03 Fri 21:09 | URL | MK−N [ 編集 ]
≫東雲さま
あぁ、ありがとうございます!
語り口も内容も、「これどうかなぁ……」と思いながらの公開だったので、そういっていただけてちょっと安心しました。

こういう「近未来もの」は初挑戦なので、時代考証(?)等々非常に拙い点がありますが、最後までお付き合いいただければ幸いです。


≫ arahabakiさま
才能なんて……過去に毎日5冊本を読む生活を三年ほど続けていたので、脳味噌が文字の群れの中にトリップしてるだけです。
これほどイタイやつもおるまい……orz

なんだかあれこれやりすぎてギチギチ首が絞まってますが、書き始めたからにはコンスタントに続けて生きたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。


≫おとうさん
あう……ごめんなさい、「キリカ」はマスターの方なんです……
神姫さんのほうはマスターが鞄を落としたときに口走った「ヤシュ」というのが名前なのです。
この辺のことは次回にちゃんと書くつもりだったのですが、やっぱりややこしいのか私の書き方……。

学生のころのように短期間で仕上げることはできませんが、あんまり放置しても活字が脳からあふれそう(もしくはかれはてそう)なんで、ぼちぼち書いていきたいと思います。
2009-07-03 Fri 21:51 | URL | 嫁子 [ 編集 ]

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