(有)二階堂商店

しもたや。

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ながいくび(仮)②

嫁子が書いた駄文。横書きに不慣れなため、非常に読みにくいです。
読みにくい上につまらないものを見る覚悟のある方のみどうぞ。




そうやって気道につかえたものを無理やりに嚥下して、ふと気付く。
首を廻らせ、玄関につながる部屋の入り口から、西向きの窓の前のデスクとその隣の本棚、押入れ、隣の部屋へと続く茶色くあせたふすまを見、また入り口へと視線を戻す。
八畳間の壁に張り付くように設置された本棚、味気ない金属製のデスク、寿命を当に過ぎてなお床に敷かれ続ける畳の上、ついでにしばらく外気を入れていない押入れ。
どこも整理整頓されているとはいえないが、それでも魔窟と呼ばれるレベルにはいたっておらず、独り身の男の部屋としては優秀な部類に入ることができるのではないだろうか。少なくとも、電灯の紐に彼女が飛び移れるほどの高さまで物は積まれていない。
視線を落としてみても掌の少女は微動だにせず、彼の向こうを見透かしている。
「……ヤシュ、お前どうやってあそこまでのぼった?」
彼女からは何のアクションもないまま、また振動が右腕を小さく振るわせる。極小のレンズの奥、彼の脳では到底理解できない無数の機械の群れがひしめいてこの問いに最適な答えをさがしあてるのだろう。彼女の思考する機関が頭部にあるのかすら知りはしないし、電子部品の中を電気がめぐって演算する事をはたして思考と呼んで差し支えないかどうかなど判断もつかないが、とまれ、彼はしばらくのあいだ回答を待っていた。
キリキリと何かがこすれ削れるようなハードの音が止み、それでも「声」は発されない。開ききったような瞳も相変わらずさえない男の顔を反射するだけで、彼の疑問に答えてはくれない。
「……ヤシュ。」
息が通り、喉笛が震え、彼女の名を紡ぐ。
常に静止しているせいで呼びかけでもしないと正常に稼動しているか判別がつかないというのはどうなのだろう。そも「神姫」なる商品が何を目的として作られているのかなど今まで興味を持たなかったが、これが致命的な欠陥にならないということは人間相手にコミュニケーションをとることを想定したモノではないのかもしれない。もっとも、何が真実かなど彼にしてみれはどうでもいいことなのだが。
思考がぐるりと一巡りする間、手の上からは何の応答もなかった。息は吐かずとも自然に漏れた。
「またフリーズかい……。」
足元の鞄を脛で押しのけて進み、デスクの上のパソコンに接続された“充電器”に彼女を降ろす。一昔前のSFに出てきそうな白と黒の「それ」にはたしか横文字の正式名称があったのだが、今、彼の記憶には該当する単語がない。
使用後のコップだのアナログな紙のダイレクトメールだの、物が隙間なく詰まれたデスクにおいて唯一全身をあらわにして寝そべっているはずキーボードの上に出した覚えのない本が居座っている。が、今はどうでもいいことだ。あかるい水彩の表紙に描かれた非現実的な色の動物を無視し、眼球をスライドさせて視界をずらした。ふと彼女と目が合ったような錯覚にとらわれたが、それこそ非現実的だ。ショッキングピンクのキリンに笑われたとしてもても仕方がない。
しおれた花束の茎ような髪の一束が、彼女の右頬をかすめて細い細い首筋に沿うように巻いている。仕様なのかはたまた偶然なのか、どういう経緯で癖がついたものだかわからないが気がつくといつもこうなっているのだ。机上のケースから“メンテナンスの必需品”を一本抜き取り、そっと髪をはらってやる。頬をかすめるものにも眠り姫は動かず、その樹海のような色をした瞳が閉じることもない。ゴミ箱に綿棒を放り込み、彼はそのままの手でをモニターの横に立ててある箱を手に取った。
A4サイズで厚さは食パン一斤ほど。前面いっぱいに描きこまれた樹木のような図案は緑一色のコントラストで着色され、上へ、底へ、両側へといっぱいに伸びた枝葉と根はそれぞれの面がすべて違う色で染め上げられている。主線のセピアが恐ろしいほどの緻密さで描いているのは植物だけではないようなのだが、デフォルメだかアレンジだかがキツすぎてそれが何なのかは判別がつかない。背面に書かれた事務的な説明が古代文字に見えるほどすべての色彩はくすんで、箱は古ぼけた図書館に棲みつく植物図鑑のような顔をしている。彼女を見るたびに遠い記憶にある中の祖父の部屋で日にあせて変色してゆく本の群れを思い出すのは、この箱のせいなのかもしれない。


それは彼女のゆりかごであり棺だとあの男は言った。
彼が始めてこの箱を手にした、その時に。


嫁子の | コメント:4 | トラックバック:0 |
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コメント

部屋の情景描写を書くとき、こうやって書くのも一つの手段なのですね。
変に説明的にならず、流れを止めずに描写できるのなら……。
……勉強になったお!

そして。
やたらと無機質で機械的な雰囲気を漂わせる神姫と、神姫とは本来縁のなさそうな青年。
その二人を出会わせた存在と。
……続きが気になるジャマイカ!(ぁ
うぐぐ。
とりあえず、続きを待たざるをえない!(ちょ
2009-07-15 Wed 22:02 | URL | 東雲 [ 編集 ]
そんなことなどまったく意識していませんでした!(コラ
むしろそんなことを読み取る東雲さんがすごいと思うんですが。

とりあえず続きがんばります!が、その前に今回の加筆修正を……何このわけわからん位置の句読点。ちょいちょい書き直しました。大筋は変わらないので完全に自己満足ですが。
2009-07-16 Thu 23:26 | URL | 嫁子 [ 編集 ]
妙に機械的というか…神姫のSSでもこういったお話はは珍しい気がしますね
フリーズした神姫とか始めて見た(゚¬゚;
いやでもありえなくはないですし
目の付けどころや解釈が斬新で面白いです!
彼とヤシュさんを出合わせた男が何者なのか、どういった経緯があったのか、いろいろきになるところですw
2009-07-18 Sat 04:00 | URL | arahabaki [ 編集 ]
うーん、バトルは全く書けそうにないし、「神姫との日常的なことを書こうかなぁ」程度であんまり深く考えてはないのですが、そんなに得意な感じなんでしょうか?
ちょっとあちこち見て回ってこようかな……

続きを楽しみにしていただけるのはとってもうれしいのですが、ばっちり裏切りそうな感じです……悪い意味で。
私に派手な展開などかけるものか!
2009-07-18 Sat 23:48 | URL | 嫁子 [ 編集 ]

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