(有)二階堂商店

しもたや。

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ながいくび(仮)③

嫁子が書いた駄文。横書きに不慣れなため、非常に読みにくいです。
読みにくい上につまらないものを見る覚悟のある方のみどうぞ。




   ※※※


異常なほどの低気温続きのこの冬一番の冷え込み。
それはどのメディアでも騒いでいたし、彼ももちろん知ってもいた。だが、知っているのと解っているのが違うということは今になってようやく思い出したところだった。くたびれたトレンチコートの中で、冷気にあてあられた細胞が縮んでいくのを自覚する。
ただひたすらに寒くて、寒くて、それだけが理由で踏み入れた店の中、彼は立ち尽くしていた。大型電気店のワンフロア、普段なら立ち寄りもせず足を止めることなどありえない場所で。
肘まで這いのぼった冷気で指先が消えてゆく感触も、凍るような風に削げ落ちそうだった耳朶が集める音声も掻き消えるほど、その一点から目が離せない。それは、美しいものに出会った、というよりは、見てはいけないものの存在に気付いてしまったような感覚だった。車の行き交う道の真っ只中に横たわる塊を見たときに感じるものとよく似た感触。
それが視界に入った瞬間に、喉でも気管でもなく、食道だけを直接握られるような不快感が延髄を切る。あれはゴミだ、誰かが捨てたものがそんな風に見えているだけ。そう言い聞かせても固定された視界はもう黒い塊から離れない。足は無意識にそちらへ向かい、その塊を視界の中で大きくする。詳細など見なければいい。見る必要もない。それが何かがわかったところで、もうどうすることもできないのだから。それに目や耳や尾や足や内臓があったところでなんだというのだ。知ったところで何の意味がある。すべてはもう終わっている――。
それでも眼球が、視神経が、脳が、意識が惹きつけられてその映像を拒めない。
20にも満たない、申し訳程度のレンタルスケースの中で、ぽっかりと白い空間がひらけたワンスペース。そこにある朽ちた色彩が不穏な期待を以って彼を誘惑し、意識とは無関係にその足を運ばせる。
物がひしめく他のケースとは違い、とっぷりとコーヒーに浸して染め上げたような箱ひとつを漫然と収めたケースは彼の頭上に位置していた。箱は鍵付きのガラス戸の奥に置かれているため上面に視線は届かず、側面は隣のスペースとの仕切り板に視界を阻まれ見ることはできない。ただ彼の目に映るのは枯れてゆく木の葉のような緑色の絵画だった。
――あれを手に取りたい。あれを自分のものにしたい。
冷えた指先がいつの間にか汗を握っていた。これほど強い欲望が自分の中にあったことに驚きながら、それでも瞳はそれを舐めまわして離れない。街中で女相手にやれば間違いなく手が後ろに回るだろう。
ずっと詰まっていた息が返ってきたたのは、その箱の下につけられた値札を見たからだった。我ながら俗なものだと自嘲するより先に体温が下がる。一体中に何が入っていればこんな値がつくのだろう。並んだゼロの数を何度も数えなおしてみたが、そんなことでそこに書き入れられた馬鹿みたいな金額が下がるわけはない。
怪しまれているというのは自意識過剰なのだろうか、視界の端から店員がこちらへ向かってくるのが見えた。寒さとは別の感覚で身をすくめる。
「らしゃーあせー」
エプロン姿の男は、もはや言語とも思えぬ定型句を適当に放り投げて通り過ぎようとした。緊張を解くと同時にそれを捕まえてガラスケースを指差し、中のものが何なのかを訊ねた。
追い詰められたような彼の声にも面食らうこともなく、店員は飄々と回答する。
「えーと、あそこに書いてます通りで、こちら武装神姫になりますねー。」
気の抜けた声同様に的を射ない答えが返ってきた。その「武装神姫」が何なのかが知りたいというのに、得られた情報はこの文字列の読み方だけ。漏れそうになる暴言を息に変え、もう一度訊きなおす。
「……もうちょっと詳しく知りたいんやけど。」
営業スマイルのつもりなのかもしれないが、やけに鼻につく笑みだ。
しかし、その笑みが「あ、じゃあ見てみます?」と腰の折れたような声で言いながら彼に背を向け、返事も待たずに鍵を取り出しガラス戸の内から箱を手に取ったのを見てどうでもよくなった。先ほどまでは見えなかった面が視界に入り、そこが緑でないことに少し意外性を感じると同時に焦がれる気持ちが強くなる。側面すべての面が異なる色で塗られた箱を抱えて店員は彼のほうに抜き直り、一番面積の広い緑色の面をこちらに向けた。植物図鑑のようなその箱の前面に手をかけ、本のページを繰るようにこじ開ける。ビリビリと何かが引き攣れる音がしてぎょっとしたが、よく見れば表紙のようにはがれた部分と本体には面ファスナーがついており、めくられた前面にあいた窓から中身が見えるようになっているらしい。
透明の板に光が反射して、白く彼の目を射る。おかげで中に何が入っているのかは見えないが、箱と同じくくすんだ色合いの固まりがいくつか収まっているのがかろうじて見て取れた。

嫁子の | コメント:4 | トラックバック:0 |
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コメント

一目ぼれあるよねー。
理由とかは別として、妙に惹かれる事って。
こういう出会いもまた、個人的は好きですが(ぉ

……確かに、神姫はパソコン並みの値段だから、10万は超えるもんねぇ。
そりゃ引き戻されるでしょうとも。

しかし。
ちょ、定員。
妙にキャラが立って(ry
2009-07-23 Thu 20:50 | URL | 東雲 [ 編集 ]
>店員
彼は何の変哲もないチョイ役ですなんですが……
何も考えずにかいたらこうなりました。

>値段
嫁子なら気絶します。
2009-07-23 Thu 23:06 | URL | 嫁子 [ 編集 ]
いやはや毎回描写が繊細というか…
スゴクリアリティのあるストーリーですよね。

いやしかしやっぱ現実に神姫が販売されれば10数万ぐらいの値段がしそうですね~
一つのお宅に複数の神姫さんがいるというのは実際かなりの贅沢なのかも(゚¬゚;

2009-07-27 Mon 02:02 | URL | arahabaki [ 編集 ]
描写が多いせいでなかなか話が進みません。
だから向かないのは解っているんですが……

>神姫の値段
公式ではちょっといいパソコンぐらいという設定だと聞いたので、やはりそのくらいなんでしょうね……
そうなると今の神姫みたいに姉妹とか双子とかはかなり厳しく……orz
2009-07-28 Tue 22:50 | URL | 嫁子 [ 編集 ]

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