(有)二階堂商店

しもたや。

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ながいくび(仮)④

嫁子が書いた駄文。横書きに不慣れなため、非常に読みにくいです。
読みにくい上につまらないものを見る覚悟のある方のみどうぞ。





「どうぞ、手にとってごらんになってください。」
そんな声を聞いた気がしたが、それが目の前の店員のものだったかは確証がない。
魅せられたようにそちらに向かい、その塊を視界の中で大きくする。喉にこみ上げてくるのが酸味ではなく熱気なのは、道路に転がるものと違ってまだ何も終わっていないからだろうか。箱を手に取り、深く肺の奥まで電気屋の白々しい明るさを吸い込んだ。そこにあるのはゴミか、それとも死骸か――……前者ならば何も始まらず、彼は当たり前の帰路に着くのだろう。呼吸を殺したまま、反射光の失せた空間を覗き込む。
「……」
青く塗られたパッケージの中面に横たわるのは、少女だった。片手で握りつぶせてしまうほど小さな少女。
日向に茂る蔦のような長い髪、肌は白磁というよりコーヒーにどぼどぼとミルクを注いだようなごく薄いベージュで、長い手足は骨のように細く、あどけない顔にぽっかりと開いた二つの眼窩に収まる擬似眼球が緑とも青ともつかない色で棺の底から彼を静かに見上げている。
数ミリほどの瞳の中で開く瞳孔と見つめあう彼の中で、何かが静かに千切れて解けた。今まで積み重ねてきたものが確実に狂ったのを感じる。
そういえば祖父はよく古書を衝動買いしてきていたと聞かされたことがあった。語り手は父だったかそれとも親戚の一人だったのか。そのあたりのことは思い出せないが、一冊あたりの値段に面食らったことはだけは今も鮮明に覚えている。主のない部屋で朽ちていく本の群れを眺めながらこんなものによくもそんな大金を叩き込んだものだと嘲笑したが、しかしその祖父の血は確実に彼の中にも流れているらしい。もっとも、そのころと今とでは時代が違いすぎていることはわかっている。祖父が若かったころに限界まで膨れて壊れて消えたシャボン玉が発生することは二度となかった。少なくとも、彼の家系では。
「……これ、まけてくれへん?」
「はい?」
一段高くなった声と一緒に店員の目が眼窩を一周する。サーカスのような見事な芸を披露してくれたその目に向かって、彼は初めて微笑んだ。好意ではなくもっと原始的な意味合いをこめて。
「買うから、ちょっと安してって言うてんねんけど。」
何を言ってるんだこいつは、という表情をすぐに笑顔で覆い隠したのは褒めてやるべきなのだろう。たとえうそ臭くて腹立たしい笑みよりも、驚きから僅かな侮蔑がのぞく顔のほうがよほど好感が持てたとしても。意味不明なニヤニヤ顔と向き合って、電気店の販売員なのだからマイナスな笑顔というのは致命的ではないかと独りごちる。
そんな評価をつけられていることなど知りもせず、目の前の男は大きなロゴ入りの青いエプロンで何度も手のひらをぬぐっていた。変なのに絡まれたなぁとでも思っているに違いない。
「えっと……こちらは私どもで価格設定をしている商品ではございませんので、このレンタルケースのオーナーさまと直接交渉していただくということになりますが……」
低くなった声は、いまさらながらに気がついた彼の狂気への警戒か。もしこれで圧力をかけているつもりだったとしても、鳩尾で渦巻く欲望の大きさの前では何の抑止力にもならない。こんなことをするから関西人はどうのこうのと言われてしまうのだ、と脳の奥の理性がつぶやいても、その声は身体にはとどかない。今彼に指令を送るのは脳ではなく全身を巡る血液だ。頭を埋め尽くす赤が彼を喋らせる。
「客同士のトラブル避けるために、普通は店が間に入るもんちゃうんかい、あ?」
思い返せば頭を地面にうずめたくなるほど低脳な言い分だが、そのときはもうこの箱の中で眠る少女を自分の手の内に置きたいという衝動以外の思考は死滅していた。値札にしたがって支払ってしまうと、「飲まず食わず」どころか「住まず」を付け足してもぎりぎりのラインだ。持ち主の息が絶えてしまえば、すべての宝は意味を亡くしてしまう。最悪7割、欲を言うなら半額で入手したい。
「そうは言われましても……」
先ほど宙返りした目が今度は踊り始めた。見つかるはずのないものをさがして、右、左、右、右、左。流れるような舞踊というよりは、お道化たタップダンスのように見える。
二つそろったそのステップが止まったのと、彼の手の上の箱がすっと暗くなったのほぼ同時だった。巨大というわけでもなく、複数の光源に色を散らされた弱々しいその影に、彼も店員も顔を上げた。二人が反射的に向けた視線よりも上方で紡がれた言葉が降りてくる。
「君は、その子の何が欲しいの?」
すすけた影の上に同じ形の指が重なって、彼の持つ箱の中を示していた。


嫁子の | コメント:4 | トラックバック:0 |
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コメント

値切るのは関西人だけではありません。
名古屋の人間は三度値切ると言われており、結構値切るようです。
ま、私は両親が道産子なので無関係ですが(ぁ
それはさておき。
「飲まず食わず住まず」とは、リアルに危険ですね。
神姫は公式で2009年現代におけるパソコンと同程度の価格設定との記述があったと思います。
確か、種子が主人公の小説だったっけな。
なので、計画性も無く購入しようとすると、確かに「飲まず食わず住まず」が視野に入ってしまいますね。
しかもショーケースの奴なら、分割とはいえそうにないですしねぇ。

そして何やらかが来た!
そして意味深な台詞。
そして登場位置から神姫を思わせる。
そして続きが気にな(ry

相変わらず心理描写が丁寧で、心の機微まで伝わってくるようで。
はっきりと頭の中に仕草が浮かんでくるのがいいですねっ。
難点といえば……書くのが大変だろう、という事ですか。
がんばってっ!(ぉ
2009-07-29 Wed 18:59 | URL | 東雲 [ 編集 ]
どこの人でも値切る人は値切るし値切らない人は値切らないんですが、堺の商人のイメージが強烈なんですかねぇ?

>新規の値段
おいおい主人公の暮らし向きも解ってくると思うので、今回の散財がいかほどの影響だったかとかも想像していただけるように書ければなぁと思っております。


書くのは大変じゃないですよー。スランプさえ抜ければ……。
ちょっと昔に書いたものとか引っ張り出したら今のより読みやすくて泣けました。
あと、毎回東雲さんにコメントいただいた後にちょこちょこ書き直してますorz


神姫ssなのに神姫出て来なさすぎ……次回はきっと……!!多分……!あわよくば……。



気長にまってやってくださいませ。


2009-07-29 Wed 22:30 | URL | 嫁子 [ 編集 ]
や、毎回描写が緻密で読んでいるだけでその場の光景が浮かんでくるようですっ

一目惚れしたものが高価なモノだったとなると難儀ですな…
うちも一時期一人暮らしをしていた時はそれまで田舎に住んでいたもので雑誌等でしか見たこと無いフィギュアやホビー等に目が眩んであやうく「飲まず食わず住まず」になるとこでした(゚¬゚;

いやしかし何者かが表れたようで・・・
果たしてこの(金銭的な)ピンチをどう乗り切るのか!(ぉ
2009-08-02 Sun 10:05 | URL | arahabaki [ 編集 ]
天下の回り物はいくらあっても足りませんねー。
生まれてこの方潤沢に持っていたことなどないのですがw

>雑誌等でしか見たこと無いフィギュアやホビー等に目が眩んで

それ!すごく解ります!
私の場合は部活動以外で県外に出るようになったのが結婚して子供生まれてからだったんで、さすがに買えずにスゴスゴ引き上げてきてたんですが……気がついたらkonozamaですwww
2009-08-03 Mon 10:27 | URL | 嫁子 [ 編集 ]

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